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新派について

八月新派公演『香華(こうげ)』

『香華』上演記念トークショーの模様

八月新派公演『香華(こうげ)』の上演にあたり、三越劇場のある日本橋三越本店にて、演出の石井ふく子、水谷八重子、波乃久里子の3人がトークショーを行いました。

───まず今回の作品の魅力は?
石井:

石井ふく子
8月5日(木)から三越劇場で『香華』をやることになり、演出を仰せつかりました。これはどなたがご覧になっても本当に分かりやすい芝居です。水谷八重子さん、波乃久里子さんが、母娘の役を丁々発止とやるのが楽しみで、毎日稽古に励んでおります。
八重子さんの演じる郁代(いくよ)という母親の役、久里子さんの演じる朋子という娘の役、戦前から戦後へと大きく変わる時代に生きた2人を中心とした物語です。親子もいろいろあると思いますが、いまは物が豊かになった分、心が貧しくなったという部分もあって、その中で親子が向き合うということが難しい時代になっているのではと思います。皆様にぜひご覧頂き、親子の血のつながりというものが、やっぱり不思議なものだと感じて頂けたら嬉しいと思います。喜劇的なところもありますが、笑わせようと思ってやるのではなく、真面目にやればやる程おもしろいというお芝居にできたらと思います。
───それぞれの役はどんな役でしょうか?
水谷:

水谷八重子
郁代という女はともかくしたい放題に、自分の体の及ぶ所どこにでも行き、何度でも性懲りなく結婚する。こんな風に思う存分生きられたらいいな…とは思うのですが、私とは全く違う性格なのでなかなか理解ができず…。だからこれは自分自身が郁代になってしまうしかない!そう思っていま郁代に一生懸命、接近中です。すこし郁代が見えたかな?と思って、一晩眠ると郁代がいなくなっちゃったり、稽古場から帰宅すると分からなくなったり…。でも稽古場に行くと石井先生がいらっしゃるので安心して身を任せています。だから5日の初日には、完全に郁代という一人の女が、この三越劇場の舞台に立つと思っています。
波乃:

波乃久里子
八重子お姉さまの扮する、自由奔放に男遍歴を繰り返す母の郁代に対して、私の演じる娘の朋子は、母親の様にするまいと生き、母を恨み、たしなめながら、母の面倒をみるような健気な女性です。郁代も朋子も、それぞれに裏と表がお互いにあるような気がします。郁代の中に朋子もいるし、朋子の中に郁代もいる。明治から昭和にかけてのお話ですが、そういった意味では、女性そのものの面白さが出ているような気がしてならないんです。何度も結婚する母親の男遍歴や、花柳界の様子などを描いた芝居で、ともかくとても面白いお芝居だと思います。ぜひ皆さんにご覧頂けたらと思います。
───お稽古の様子は?
石井:
私も夢中になって演出するのですが、八重子さんも久里子さんも、そして他の皆さんも、髪振り乱して…という感じです。お2人ともきちっとセリフを覚えてくださっています。セリフを覚えて、動きとセリフが一致しないとできないんですよね。いまお稽古している成果が、初日にどう花開くか、演出としてとても楽しみです。
水谷:
行き過ぎたらおさえてくれる、足りないところは徐々に引き出してくれる。大きな母親のような演出家の掌の上で、思う存分お稽古ができる、そういう幸せなお稽古でございます。郁代は和歌山育ちなので、和歌山弁でずっと通すのですが、とても難しくて苦しんでいます。ただ、有吉先生は郁代の魅力のひとつとして、和歌山弁を使っていらっしゃると思うので、ぜひマスターしたいと思っております!
波乃:
石井先生のエネルギーのすごさに本当に頭が下がるばかりです。本当にすごい根気、そしてエネルギー!この前、稽古休みの日があったのですが、その次の日に稽古場に行ったら『はい、もう一回全部変えますよ』って、お休みの日でもずっと考えていらっしゃったんですよね。このエネルギーってすごいことですよね。苦しさの中に、人間として叩き込まれるものがいっぱいある、そんなお稽古場です。
───郁代をずっと慕い続ける使用人・桑田八郎を演じる佐藤B作さんについては?
水谷:
初共演となります。この八郎という方は、郁代が何度他の男と結婚しようが、尽くし続け、慕い続けている。そして最後に郁代が“誰もいない、男がいない…”という時に捕まえた男が八郎なんです。郁代が『はじめの男からみれば、だんだん落ちていくわなあ』と言う、かわいそうなセリフがあるのですが、一番落ち着けるところにいるのがB作さんの演じる八郎。その人生をひとつとっても大きなお芝居になる、そんな大切なすてきなお役なんです。とても温かく誠実なB作さんが演じる八郎に尽くして頂ける郁代…、本当に幸せです。
───波乃久里子さんからみたB作さんは?
波乃:
20年ほど前にご一緒させて頂いた時、この方は体に時代の雰囲気をもっていて、ぜひ明治・大正のお芝居をと思い、ラブコールをしたことがあります。そうしたら『名前にBなんて役者が新派に出演なんて、とんでもない!』とおっしゃって頂いたことがありました(笑)。20年前にアタックした私の目は正しかったと、今回つくづく自分を褒めております。それくらい新派にも八郎のお役にもあっていて、今回本当に八郎のお役がぴったりで、八郎という人を連れてきてしまったみたいなんです。
───朋子の相手役となる、陸軍将校・江崎文武を演じる松村雄基さんは、波乃久里子さんとは3度目の恋人役となるようですが…。
波乃:
一度目の『ふりだした雪』はすれ違いの役で、二度目となった昨年の『おんなの家』では松村さんが結婚詐欺師、悪人だったんですよ!今度は相思相愛だけど、将校さんの結婚には親の許しがいる。親が興信所をつかって調べたら、朋子の母親・郁代がお女郎さんだったことが分かり、2人は別れなくてはならない。そして江崎さんは戦死してしまう…。たった3年間の本当にあわい悲恋ですが、朋子にとって生涯でただ一人の男になってくださる方です。とても新鮮な恋人になってくださっています
───最後に一言ずつ
石井:
いま熱中症が本当にはやっていますが、皆さんがお元気で劇場にお越し頂けるようお祈りしております。気をつけてお過ごしくださいね。
水谷:
“かおるはな”と書いて香華。これは仏教で、仏様にお供えする香りとお花のことだと聞きました。私たちもお客様へ香華となって捧げつくしたいと思います。ぜひ捧げさせて下さい!そのためにはぜひ劇場にお越し頂かないといけません。どうぞよろしくお願い致します。
波乃:
石井先生もおっしゃっていましたが、大変な猛暑ですから、外に遊びにいったり旅行に行ったり…というのではなく、よっぽど三越にお越し頂いて、お買い物して、香華をご覧になっていただいて、新派を2度も3度も観て頂いたらいいと思いますよ!ぜひ劇場でお待ちしております。

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