METバックステージツアー付き観劇チケット当選者 現地レポート②

2018年10月23日 火曜日

<リンカーンセンター>

1.現地メトロポリタン歌劇場【MET】の印象

アメリカが誇るクラシックの殿堂リンカーンセンターにあるというだけでもワクワクしました。ジュリアード音楽院、NYフィルやNYCバレエの本拠地もあり、噴水広場が迎えてくれました。白い大理石の建物で、シャガールの壁画がガラス窓の向こう両側に見えます。劇場内の天井には雫がはねたような独特のシャンデリア。それらが上がりオペラが始まると、音響の良さに驚かされました。両手をゆるやかに伸ばしたような曲線の壁が連なっていて、特別な木で出来ているらしいのですが、樹木の素材と客席形状が音響に関係しているのでしょうか。とにかく「METにきた~!」とオペラを十二分に楽しむ雰囲気に満ちていました。

 

<有名なシャガールの絵画>

2.バックステージツアー

案内人のヒラリーさんはMETで仕事をして20年以上、日本にも4年ほどいらした方。その人脈を活かして、エレベーターで上へ下へ、舞台装置やカツラの箱、大道具などの脇を通り抜けてあちらこちらへ…と、迷路のようなバックステージを、舞台の裏側や引越し公演の裏話なども交えて案内してくれました。ライブビューイング(LV)で舞台転換の映像を見ていたので、多くの人が関わっているとは思っていましたが、その人数は想像以上でした。

舞台転換は、上下に動くもの、舞台幅と同じだけスライドするもの、円形の回り舞台など大規模で、舞台装置をそれらに移動したり、離れた倉庫に出し入れしながら、日ごと違う演目、マチネがある日は昼夜で違う演目を上演するとのこと。レパートリー・システムの運営は大変だと思いましたが、多くの関係者が協働して、このような細部にまで亘る膨大な作業を問題なく行っていることに驚きを感じました。

その他にも、リハーサル室、衣裳室、小道具等の作成室なども見ることができ、楽屋だけでなく、ピアノの置かれた練習室が想像以上に多く、やはり普通の舞台とは違うオペラの劇場なのだと改めて実感しました。ちょうど衣裳担当チーフの方がラムフィス王の控え室に入れてくださり、実際の王冠を被せてくださいました!衣裳は重厚でかなり重く、これを着て王冠を被り、動きながら歌を歌うというのは、重労働だと驚きました。翌日の公演のために、綺麗に手直しをしている最中の小道具があり、それを舞台で見つけたときには、一人で微笑んでしまいました。とにかく楽しいバックステージツアーでした。

 

3.《アイーダ》の感想

ネトレプコのアイーダを初めて見ましたが、格調高く歌っていると感じました。指揮者ニコラ・ルイゾッティも初めてでしたが、大仰にならずに心地よく、また聴いてみたいと思いました。アリアももちろん良かったのですが、アイーダ、ラダメス、アムネリス、アモナズロ、国王など、それぞれが心の葛藤を表現する各幕の最後の合唱は、やはり生のの舞台だからこそと感じられ圧巻でした。神殿の中から聞こえてくる巫女の祈り声、合唱、アイーダ・トランペット…多元的な音がそれぞれの場所から聞こえていました。そして、異国情緒溢れる踊りと、壮大な舞台装置も素晴らしいの一言でした。

 

<歴代の指揮者、歌手らの写真>

4.本公演を見てあらためて感じる「METライブビューイング」ならではの魅力

何と言っても生の舞台では見られない様々な映像やインタビューがあることだと思います。冒頭の魅力的な案内人からの作品解説、歌手に加えて、演出家、指揮者、衣裳担当など、関係するスタッフのインタビューがあるので、作品を理解しつつ、見どころも楽しむことができます。舞台転換の様子はLVならではで、バックステージツアー参加後のこれからは、もっと興味深く見ることができると思います。生のオペラは長時間に及ぶため、体力的に厳しい一面もありますが、日本の映画館で観るLVでしたら、毎シーズン、時には毎週のように、無理なく10作品をも鑑賞出来るのだと思いました。