【『曽根崎心中』鑑賞レポート】人間国宝・四世坂田藤十郎の芸をじっくり見るなら
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(イラスト・文:とめきもの)
映画『国宝』でも主人公たちが芸の真髄を追い求める姿に重なり話題になった上方歌舞伎の代表的演目『曽根崎心中』
遊女お初を生涯1400回以上演じた坂田藤十郎さんと、大名跡を継ぎ、映画『国宝』の歌舞伎指導にもあたった中村鴈治郎さんによる2009年の歌舞伎座公演が素晴らしい編集技術でシネマ歌舞伎として蘇りました…!!
今回松竹さまよりお声がけをいただき、このシネマ歌舞伎のPRをさせていただくことになりましたので歓喜しながら一足お先に拝見し、私が感じた見どころを紹介させていただきます。
『曽根崎心中』が初演されたのは江戸時代。空前の大ヒットの末、真似をして心中するカップルが多発し長らく公演禁止になるほどでした。初演から250年ほど経ち宇野信夫が脚色・演出を加えて『曽根崎心中』という演目を復活させ再び大人気を博しました。
歌舞伎の女方、というと男性目線で理想化された女性像なので、おしとやかで弱々しく運命に翻弄され涙する…
そんなイメージが強いのではないでしょうか?
でも『曽根崎心中』は違います。
復活したこの演目が一大ブームを巻き起こすほどの人気演目になったのには理由があります。
それは、この物語の主人公の1人、お初はリアルによくいる普通の女性=「私」だから。

陽気に笑いよく喋り、気弱な優男の恋人に自分が先に死を覚悟して問いかける。
実際江戸時代も、普通の男女はそんなもんだったんじゃないかな。
映画『国宝』の感想で「渡辺謙さんがお初って!」と意外そうなポストをSNSでも見かけましたが、そう、実はお初は決して若手女方の専売特許じゃないんですよね。
1400回を超える公演の中で磨き上げられた大ベテランによるお初。その円熟の芸にいつの間にか引き込まれる感覚を味わってほしいです。
上方歌舞伎らしい和事の柔らかさ、リアリティを色んな角度から楽しんでみてはいかがでしょうか?

そして私は、実は思わず涙が溢れたシーンがありまして。
クライマックスはもちろんジーンとしたけど、徳兵衛の伯父平野屋久右衛門役、片岡我當さんの長台詞にものすごく感情を揺さぶられました。
やっぱり人間国宝を支えてきた脇を固める皆さんもさすがの実力派ぞろいなんですね。
歌舞伎見て泣いたことなかったんだけど、やっぱりこれってシネマならではのズームや画角の演出に感情移入がしやすかったこともあるのかもしれません。

舞台とはまた違ったシネマで観る歌舞伎の良さに気づかせてもらいました。
ぜひお近くの上映館に足を運んでみてくださいね!
そして観る前にあらすじや物語の背景を知っておくなら『きものと』の連載「十倍面白い!?歌舞伎ど定番演目大解剖」もぜひ!偶然『曽根崎心中』をテーマに公開されています。
▶きものと:『曽根崎心中』江戸で話題沸騰の人気ドラマ 「十倍おもしろい!?歌舞伎ど定番演目大解剖」vol.2を読む
| イラスト・文:とめきもの 着物と服飾史をまじめに面白がるイラストレーター・エッセイスト。京都きもの市場の読み物サイト『きものと』にて様々なテーマで連載している。現在は『十倍面白い!?歌舞伎ど定番演目大解剖】と題して、初心者でも通でも歌舞伎を身近に楽しめる見どころやストーリーの背景などをわかりやすく解説する連載が好評。 ▶Instagramアカウントはこちら(@tome_kimono) |