シネマ歌舞伎

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〈第8弾〉
刺青奇偶 (いれずみちょうはん)

『刺青奇偶』作品紹介

作:長谷川伸
演出:寺崎裕則

戦前戦後を通じて小説、戯曲で数多くの名作を残し、股旅物の創始者としても名高い長谷川伸の代表作。

2008年4月歌舞伎座にて、半太郎に勘三郎、お仲に玉三郎、そして鮫の政五郎に仁左衛門という豪華配役で上演。1999年に同じ顔合わせで上演されて以来、実に9年ぶりの再共演が大きな話題となった本作品が、シネマ歌舞伎として登場します。

博打を止められない悲しい男の業や、夫婦の情愛が巧みに描かれた心に染み入る名舞台を大スクリーンでお楽しみください。

あらすじ

生来の博打好きで江戸を追われた半太郎は、身投げした酌婦のお仲を救う。不幸続きの人生を送ってきたお仲は、本当の親切心から自分を救ってくれた半太郎の心根の美しさに胸を打たれて、生まれて初めて会った男らしい男、半太郎の後を追う。

こうして半太郎とお仲は夫婦となるが、半太郎は博打を止められない。やがて死病に罹ったお仲は半太郎の行く末を心配し、博打を止めて欲しいと願って半太郎の二の腕に骰子(サイコロ)の刺青を彫る。

博打を断った半太郎だが、この世の名残にお仲に良い思いをさせたいと博打に出かけ、賭場に難癖をつけ叩き出されてしまう。ところが、鮫の政五郎親分から意外な話を持ちかけられ、お仲のために、政五郎親分との命を懸けた勝負に挑むことになり...。

シネマ歌舞伎『刺青奇偶』賛

文:寺崎 裕則(演出)

生まれて初めて「シネマ歌舞伎」を見た。

『刺青奇偶』。何度も自分で演出しているのに、不覚にも我を忘れて画面を見つめ、長谷川伸の世界にのめり込む。中村勘三郎の半太郎、坂東玉三郎のお仲の出逢いから、夫婦となり、女房が胸を痛み、余命幾ばくもない中で、遺言のように半太郎の腕に骰子の刺青までしたのに、死にゆく愛する女房にせめて家中を諸道具で飾りたて死出の旅へ送り出そうと、いかさま博奕を仕掛け、見つかり半殺しにあった後、片岡仁左衛門の鮫の政五郎と命を賭けての大勝負で遂に勝ち、「お仲、待ってろよ、死んじゃだめだよう!」と叫びながら花道をまっしぐらに駈け抜ける勘三郎--。

このドラマのクライマックス、死期を知ったお仲が「後生一生のお願い」と愛する半太郎の右腕に一針、一針、愛を込め骰子を彫り込んでゆく--。彫り込まれてゆく半太郎、こらえてもこらえてもあふれくる涙--。

何度、舞台を見ていても思わず目頭が熱くなる。それが大映しとなるのだからたまらない。

舞台が、そのまま自然にシネマになってゆく。しかも映画やTVと違ってワン・カットづつ撮り、それをモンタージュ、つないで行くのではない。もう既に舞台のドラマの流れが出来ているのを逆に観客の立場にたって見たい所、見て欲しい所を見事にカット割して、ごく自然に舞台と同じ流れにしているから、顔の表情、体のしぐさまで大写しとなる。だからもし、役者がその役になりきっていなかったら、たちまち嘘がばれる。

だが、そんな所は微塵もない。今や能でいう「まことの花」の勘三郎、玉三郎、仁左衛門をはじめ、出演したすべての役者、誰もが皆、その役になりきり、生きている。

演劇の目的は人間の描写にある。作者、演出者、役者が努力して人間を描出し、観客はそれを見て、人生の哀感を感じる。それが真の演劇ではないだろうか。

「シネマ歌舞伎」の監督中谷宏幸さんは見事なカット割とモンタージュで、それを証してくれた。

私は長谷川伸の戯曲が大好きだ。『瞼の母』『刺青奇偶』『一本刀土俵入』を演出して思うことは、先生の戯曲には、日本人の心の奥底を揺さぶる、理屈ではない、"理"を超えた"情"の"愛"の世界がある。たとい刺青され意見されても、親分の鮫の政五郎の骰子で対決した時、その刺青がチクリと痛んでも、日本一好きな女に夢を持たせてあの世へ行ってもらいたい、という半太郎の熱い"情"が、見る人の心の奥底を揺さぶるのだ。

愛薄き人に、愛を与える素晴らしさ。そこに長谷川伸の戯曲のいつに変らぬ魅力がある。

と、同時に、今の時代こそ、日本人の心の奥底にあるものは、こうなんですよ!日本人ならではの"心"を目覚めさせたい。訴えたい。

幸い「シネマ歌舞伎」という全く新しいジャンルが確立されつつある。

『刺青奇偶』が日本中の映画館で上演されることを切に願う。




寺崎 裕則(てらさき ひろのり)
演出家・(財)日本オペレッタ協会理事長・芸術監督。
学習院大学政経学部経済学科卒業。文学座演出部に入座。三島由紀夫氏と共に、NLT、浪曼劇場を創立。その間、'60年より新歌舞伎の演出に携わり宇野信夫氏に師事。今日に至る。'74年東独コーミッシェオーパーのW・フェルゼンシュタイン演出家に師事。'77年日本オペレッタ協会を創立。'86年西麻布にオペレッタホールを創設。'91年財団法人となり、クラシックの歌役者を育成。歌舞伎とオペレッタの東西音楽劇を融合。'93年オペレッタの普及により、ウィーン州並びにウィーン市より"金の栄誉勲章=Golden ehren Zeichen"を受章。31年間、オーソドックスな日本ならではのオペレッタを創造、普及。日本初演22改訂作品8その集大成として'05年F・レハール『メリー・ウィドウ』で「三菱UFJ信託・音楽賞」「文化庁長官表彰」を受賞。
『魅惑のウィンナオペレッタ』等、著書、評論、CD、DVD多数。

『刺青奇偶 』予告動画

上映劇場・上映スケジュール

都道府県 上映劇場(お問合せ先) 上映期間 備考
神奈川 小田原コロナシネマワールド
0465-45-5675
2017年11月 4日(土)~2017年11月17日(金)

料金

<基本料金>
一般料金  2,100円(税込)
学生・小人 1,500円(税込)



※特別興行につきサービスデー、レディースデーなど各種割引料金の設定はございません。
※≪月イチ歌舞伎≫とは異なりますので、スタンプラリー・月イチ歌舞伎専用鑑賞券はご利用いただけません。
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刺青奇偶
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作品概要
  • 上演月:2008年(平成20年)4月
  • 上演劇場:歌舞伎座
  • シネマ歌舞伎公開日:2009年2月28日
  • 上映時間:88分
配役
  • 手取りの半太郎:中村 勘三郎
  • 酌婦お仲:坂東 玉三郎
  • 荒木田の熊介:片岡 亀蔵
  • 半太郎従弟太郎吉:市川 高麗蔵
  • 鮫の政五郎:片岡 仁左衛門

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