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2017.03.16

宮本亜門が語る『コメディ・トゥナイト!』

   3月4日に新橋演舞場で開幕したブロードウェイ・ミュージカル『コメディ・トゥナイト!ローマで起こったおかしな出来事《江戸版》』の演出家・宮本亜門に話を聞いた。
   
   これまで巨匠スティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲のミュージカルを多数手掛けてきた宮本。その第一弾となったのが黒船来航をテーマにした『太平洋序曲』で、2000年に新国立劇場で初演後、2004年にはブロードウェイ進出も果たした。そのブロードウェイ公演の際、ソンドハイム本人から「『ローマで起った奇妙な出来事』を江戸版にする企画があるから、演出しないか」と言われたという。

「もとは、ブロードウェイ作品の版権を持っているミュージック・シアター・インターナショナル(MTI)社の、青鹿宏二さんのアイデア。それを聞いたソンドハイムさんが興味を持ち、“絶対亜門にやらせよう”となったみたいで。直々に勧められたんですよね。1962年に初演された『ローマで~』は、それまで『ウエスト・サイド・ストーリー』(57年)や『ジプシー』(59年)で作詞家として活躍していたソンドハイムさんが、初めて作曲も手掛けられた作品。僕も2~3回、ブロードウェイで観たことがありますが、徹底的なドタバタ喜劇としてよくできているんです。でも正直、自分で演出するなんて思ってもみなかった(笑)。だけどソンドハイムさんが“自分が一番苦労して作った作品だから、亜門がどう演出するか観てみたい”と言ってくれたんです。あれから13年。彼の期待通りの舞台に仕上がったのかどうか……まだ観てもらっていないので分かりませんが、破天荒な内容の作品なのでそれを幕開きからお客様に面白がっていただけるよう、カラフルなステージにしたよって、取り急ぎメールで報告しておきました」

   原作は、古代ローマで奴隷として働く主人公が自由を求めて奔走する姿を描いたブロードウェイ・ミュージカル。それを江戸版にするにあたり、苦労したところはあったのだろうか。

    「今回上演台本もやっているんですが、台詞や歌詞を何度も何度も作り直しました。金髪のカツラを被っていれば許されるような言い回しも、ちょんまげ姿だと違和感がある……ならば変えようって。もともとこの江戸版があったかのように、お客様にとって一番自然体の言葉を届けたかったんです。もちろん動きについても。
 とはいえ、舞台を江戸に、主人公を丁稚にと設定は変わっていますが、原作に最大限忠実に作っています。主演が(片岡)愛之助さんということもあり、終盤、歌舞伎のパロディのような殺陣を入れてみたところと、最後の大団円で布袋屋(高橋ジョージ)と比呂(内博貴)の親子のやり取りを追加したところが唯一大きく変えたところです。後者については、原作のままだとあっさりとしすぎて、お客様に“あれ、もう終わり?”と思われてしまうと思ったので。腑に落ちるような台詞が必要かなと思い、手を加えています」

芝居の意味とちゃんとリンクした音楽

   主演の片岡愛之助は、これまで長年にわたりボイストレーニングを重ねながら、ミュージカルへの出演を熱望してきたという。今回、ミュージカル初挑戦を果たした彼との創作過程を、宮本はこう振り返る。

「愛之助さんって深みのある、かっこいい声をお持ちなんです。最初はその声で、キレイな歌い方をされていました。それこそオシャレなジャズみたいで、寝る前に聴いたらよく眠れそうだぞっていうくらい(笑)。でも、演じる丁吉は、どんどん話を変えていく人物で。例えば、(比呂とお美津を遠い島に駆け落ちさせようとする)《お船に乗って》というナンバーでは、その場で思いついたアイデアをどんどん口にしていきます。だからキレイに歌い上げてしまうと、逆に意味が伝わりづらいので、しゃべるように歌ってくださいとお願いしました。  
原作はコメディアンたちのために作られたというか。歌い上げることを目的としていない作品なんですよね。だから、(ダイアモンド✡)ユカイさんや高橋(ジョージ)さんのように、本来なら気持ちよく歌い上げたいであろう人たちにとっては、フラストレーションが溜まるんじゃないかなと。それでも、しゃべるように歌うというスタイルをそれぞれに勉強し、ウワーッといきたいところをクッと我慢して演じてくださっている。皆さん、ここまでよく頑張ってくれたと思います」

 劇中で歌われる全15曲はどれもキャッチーで、“お持ち帰りナンバー”として観劇後もしばらく耳から離れない。宮本も演出経験のある『スウィーニー・トッド』(79年)や『イントゥ・ザ・ウッズ』(87年)など、難曲の生みの親として知られるソンドハイムの作品にしては「意外」と思う観客も多いはずだ。

「確かに、ソンドハイムさんの作品の中では一番分かりやすい音楽だなと思います。でも先ほどもチラッと話したように、彼いわく“一番苦労して作った”んだそう。というのも、深みのある曲を作るほうが得意なのに“誰もが口ずさめるような分かりやすいメロディを作れ!”という注文を受けていたんですって。それで、自分なりに作ってみたらキャストには“難しい”と大不評。トニー賞では作品賞をはじめ6部門受賞したのに、自分は楽曲賞をもらえなかったばかりか、ほかの人の受賞スピーチで名前すら挙げてもらえず……この手の作品は二度と作らないと決めたみたいです(笑)。
 でも僕は、ソンドハイムさんの意思がしっかり反映された、素晴らしいナンバーばかりだと思います。本来、ドタバタ劇なりの軽快なテンポで終始押し切っちゃえばいいところを、流れを止めちゃうかのようにエレガントなメロディを入れてきたりする。さっき話に出た《お船に乗って》なんてラテンのリズムなんですよ! なんでここにそのメロディ?というような、彼にしか作れないであろう微妙な“距離”が、とにかくうまい。そういった音楽のおかげで、安っぽくなりがちなドタバタ劇の品格が保たれている気がするんです。ただ、演じるほうにしてみたら大変ですよね。ルー(大柴)さんが歌う《私は情緒不安定》というナンバーは、最初軽快なのに、途中急にゆったりとした三拍子に変わるんです。本人もなぜここで三拍子?と言っていましたが、“落ち着け落ち着け”と焦っていた金吉の気持ちが実際に落ち着き、楽になったんですよ、と。リズムだけ追うと混乱してしまいますが、芝居の意味とリズムがちゃんとリンクしているんです」

   タブーをころっと笑いに変えて

   芝居・歌・ダンスというミュージカルの三大要素に加え、前述の愛之助の殺陣やフライングまで飛び出す、豪華なエンターテインメントに仕上がった『コメディ・トゥナイト!』。“お客様にとって一番自然体”な形を目指し、創作に励んできた宮本はどんな想いで初日を迎えたのか。


「僕がブロードウェイで『ローマで~』を観た時、同じタイミングでお客様が笑っていてホッとしました。2020年を前に、いろんなクリエーターやアーティストが和モノで遊び始めたっていう中の一つが本作で。ブロードウェイ・ミュージカル、江戸、そしてもしかしたら今の東京と、それぞれのらしさ、それぞれの遊びみたいなものがちょうど合わさっているハイブリッド感を楽しんでいただいているんじゃないかなと。外国のお客様がどう観るか?というのも興味がありますね。 近年オペラでは、時代などの設定を変えて作品を再構築するというのが珍しくなくなってきています。でもブロードウェイ・ミュージカル史上、“こんなこともできるんですよ”の第一号がこの『コメディ・トゥナイト!』。今後オペラのように“これもありだね”となるかもしれませんし、そういう流れになってほしいなとも願っています」

   東京公演は新橋演舞場で3月28日(火)まで。その後、4月2日(日)から25日(火)まで大阪松竹座で公演を行う。長丁場だが、そのぶん、多くの観客に笑いと喜びを届ける。

「本作で描かれるのはタブーの連続。SNSなどで叩かれる要素が満載です(笑)。でも、そんなタブーをころっと笑いに変えてお届けするコメディですから、あんまりピリピリせず、おおらかに受け止めていただければなと。その昔、江戸がおおらかだったようにね。せちがらい現代、そのおおらかさが大事だと思うんですよね」

ブロードウェイ・ミュージカル『コメディ・トゥナイト! ローマで起こったおかしな出来事《江戸版》』は、新橋演舞場で3月28日(火)まで抱腹絶倒上演中! 3月18日(土)、22日(水)にはトークショーも。 4月2日(日)から25日(火)までは大阪松竹座で上演。 チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で発売中です。

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