映画・アニメの世界

【作品データベース】母を恋はずや ははをこわずや

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・93分
没落してゆく一家の物語に異母兄弟の設定を重ね合わせ、家族の微妙なもつれを扱う作品。飯田蝶子の演じるチャブ屋の掃除婦の演技が印象的。残念ながら、現存する版は冒頭とラストの巻の欠落した不完全版である。原案の小宮周太郎は小津のペンネーム。

STORY
夫の急死後、ブルジョア生活から徐々に没落していく中、妻の千恵子(吉川満子)は女手ひとつでふたりの子どもを育て上げた。そして8年後、大学予科から本科に進んだ長男の貞夫(大日方伝)は、入学手続きの際に千恵子が自分の本当の母親でないことを知ってしまい、弟よりも自分に妙に甘く接しがちな母に反発する。千恵子は実子である次男・幸作(三井秀男)と分け隔てなく育ててきたつもりであり、彼を家族の一員だと思わせるために出生の秘密を知らせなかったと詫びるが、貞夫は納得しない。夫の友人がとりなし、貞夫は思い直して母に謝罪する。が、ある日貞夫はチャブ屋に入り浸っている学友を連れ戻しに行き、支払いを肩代わりするために母から金を借りるが、幸作から、実は家計が厳しく、母から節約を強いられたことを聞く。また、母が父親のくたびれた古着を幸作に着させようとしていることを知り、母親が幸作には打ち解けているのに自分には気を遣い特別扱いにしていると感じ、再び母を責める。母が泣いているのを見た幸作は詳しい事情を知らないまま、母を泣かせた貞夫を責め立てる。貞夫はあえて幸作に暴言を吐いて家を出る。貞夫の本心を知る母は、兄の態度に怒る幸作に事の次第をすべて打ち明ける。家を出た貞夫はチャブ屋に滞在している。心配した千恵子が訪ねてくるが、貞夫は自分は一人が性に合っているのだと嘯き、母を追い返す。肩を落として帰る母親の後ろ姿を窓から見送る貞夫の部屋に、ちょうど雑役婦が入ってくる。母と同世代の雑役婦の発した言葉に心を動かされた貞夫は、家に戻り親子3人は和解する。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
大日方伝
逢初夢子
三井秀男
吉川満子
岩田祐吉
- スタッフ -
原作:小宮周太郎
監督:小津安二郎
脚色:池田忠雄
撮影:青木勇

配給:松竹
©1934松竹株式会社

ジャンル:現代劇