母と子

公開日：1938年7月1日（金）

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・89分
矢田津世子作「秋扇」から柳井隆雄が脚色。監督の渋谷実は、吉川満子の二号さんを母に持つ田中絹代、徳大寺伸の姉弟と河村黎吉の実業家の父、佐分利信の社員、といった人間関係を卓抜した構成で演出し、興行的にも成功した。

STORY
会社の専務工藤（河村黎吉）の妾おりん（吉川満子）は娘知栄子（田中絹代）と二人で暮らしている。老いて病がちなおりんの所へ工藤は行こうとしないが、単に忙しいからとおりんは考えている。しかし、知栄子はおりんが工藤に疎まれていることに気づいている。知栄子の兄孝吉（徳大寺伸）は工藤の会社で働いているが、妾の子という自分の出自から、私生活は荒んでいる。工藤はおりんを厄介払いするため、保養地に家を与え、部下で孝吉の同僚である寺尾（佐分利信）に知栄子との縁談をもちかける。両親を亡くして下宿住まいの寺尾は、結婚の約束をしたも同然の下宿近くの食堂の娘しげ子（水戸光子）のことを伏せて、出世のために縁談に乗る。寺尾はおりんに対して母のように接し、知栄子もやぶさかではない。しかし、知栄子は、寺尾の下宿を訪れた際にしげ子と出会い、寺尾としげ子と仲を知ってしまう。そのことを知った寺尾はしげ子と絶縁し、知栄子へ弁解に訪れる。しかし、知栄子は寺尾に出世のために執着していると指摘し拒絶する。そんなやりとりの最中におりんは死んでしまう。そして、寺尾はその知らせに動ずることなく、仕事をするのだった。