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【作品データベース】わが恋せし乙女 わがこいせしおとめ

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・75分 大船作品 
牧歌的な農村を舞台に、時に心迷わせつつも血の繋がらない妹の幸せを願う兄の切ない恋模様を、凛々しく甘美に描出し得たラブ・ストーリー。木下惠介監督は戦後の解放的気分の中、ふと思いついたかのようにこの脚本を一気呵成に書き上げた。自身の清楚でつつましやかなロマンティシズムを発露させることに成功しており、その後の彼の作風にも大きな影響を与えることになった。また実弟・木下忠司が、本作で初めての兄の映画の音楽を担当。以後、この兄弟コンビは次々と名作を世に送り出すようになっていく。

STORY
美しい牧場の夜明けのこと、薄闇の中を慌ただしく走って行く人影、それはこの牧場に働く喜造老人(山路義人)である。彼は怒鳴るように叫ぶと主屋の表戸を叩いた。平和な牧場にとって喜造老人をこんなに慌てさせたことは一度もなかった。それから四年、牧場主草三郎(勝見庸太郎)の妻おきん(東山千栄子)の手で育てられた捨て子も無事に成長していた。美しく生い立てと身投げした亡き母親の願いであろうか「美子」という名であることが、後に遺言によってわかった。おきんは一人息子の甚吾(原保美)と美子(井川邦子)を変わりなく育てた。そして二人は忘れ難い思い出の幼年時代を共に過ごした。いつしか牧場にも深い秋が訪れた。甚吾と美子は牧場の青春を謳歌するかのように二十七と二十一の若人として甲斐甲斐しく働いていた。「兄さんとこうして仕事をしていると五年間も兵隊へ行っていたのが夢みたいな気がするわ。」無邪気に言う美子を見つめて甚吾はうっとりと妹の姿を見とれたりした。そんな時、甚吾の夢には完全に一人の女として成長した美子への魅力に対する歓喜が、はげしく奔ってくるのだった。幸福なこの生活も、美子にとって亡き母の面影を抱くことはたまらなく傷ましいことであった。また幾日かの日々が流れた。村への街道はどこまでも続いている。若い二人は右と左とに山を背にして駈け下りて行く馬車のように運命の岐路へとさしかかって行った。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
原保美
井川邦子
東山千栄子
増田順二
- スタッフ -
監督:木下惠介
脚本:木下惠介
撮影:楠田浩之
音楽:木下忠司

配給:松竹
©1946松竹株式会社

ジャンル:現代劇