映画・アニメの世界

【作品データベース】旅装りょそう

作品情報

INTRODUCTION
フィルム巻数・7巻 大船作品
脚本は『象を喰つた連中』『長屋紳士録』の池田忠雄(小津安二郎と協同)、『処女は真珠の如く』の中村登が監督する。カメラは厚田雄春が担当。配役は市川春代が久々に出演し、相手役は佐野周二、佐田啓二、幾野道子ら。

STORY
都会の生活、ずるずると身を引きずり込んでしまう泥沼、松井朋子(市川春代)はやっとの事その汚濁の中から逃れて来た。田舎の清澄な空気の中に生活の希望を求めて……。だが一体この田舎にたよって行くような人でもあるというのか。だれもいやしない。途方にくれる朋子の前に坂本善吉(佐野周二)現われた。彼は波止場に水揚げされた魚を、魚屋に運び込むトラックの運転手。彼の好意で、朋子は小料理屋の女中に住み込む。この店の板前新六(佐田啓二)がまたひどく親切者、おかみのおかつ(若水絹子)も亭主の重太(殿山泰司)も好人物だった。朋子は何か温い環境の中で、新しい希望の光が見える様な気がする。善吉の様な好もしい若者がもし自分の様な者に……フトそんなことを考える。希望の持てる話だろうか、心楽しい様な、さびしい様な……。ところが朋子の甘い空想を破って、この辺りの顔役で、ヤミ成金の戸山(清水一郎)がその毒牙をのばして来た。戸山にたてつくと後がこわい。悪い様にやしねえぜ、とからめ手から重太とおかつは攻められて弱ってしまった、自分の身が可愛けりゃ、戸山のいうことを聞く以外に仕様がない、板前の新六は咄嗟に機転を利かした。「このひとにゃ、チャンと恋人がいるんですよ、坂本善吉でさあ」戸山は引ッ込むより仕方あるまい。しかし御本人の朋子と善吉の方が驚いてしまった。新六がハッキリいってしまったのだ。「ほんとか?」と戸山は未練たらしく疑ぐってみる(ほんとうなんだ)善吉はそう思い込む、朋子も新六の言葉で急速に心が動いた。だがこの汚れた身体、ポッと燃え上ろうとする希望のほのおがスッと消えかかる。善吉が笑っていった。「二人で新しい生活を築いて行こう、昔のことなんか忘れてしまうんだ」朋子の眼に始めて輝かしい光がさした。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
佐野周二
市川春代
佐田啓二
幾野道子
- スタッフ -
監督:中村登
脚本:池田忠雄
撮影:厚田雄春
音楽:伊藤宣二

配給:松竹
Ⓒ1948松竹株式会社

ジャンル:現代劇