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【作品データベース】泉 いずみ

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・129分
水源地問題の中にメロドラマの要素を盛り込んだ社会派ラブ・ストーリー。岸田國士の小説を原作に、松山善三が脚色、農村と資本側の対立を男女の確執と絡み合わせた構造がユニークかつ意欲的な、小林正樹監督ならではの異色作である。なかなか真意が汲み取れないヒロインの複雑な内面を、有馬稲子が見事に体現。佐田啓二扮する戦争で右手が不自由になった幾島の虚無的な佇まいにも、戦争の惨禍を知る小林監督の想いが反映されている。

STORY
浅間山麓の曽根部落は、水源地の問題で土地の人々と土建会社の間に争いが絶えない。講演会の途中、大沼博士(小川虎之助)に随行して実業家立花公房(佐分利信)の別荘を訪ねた少壮植物学者幾島暁太郎(佐田啓二)は、立花の秘書斎木素子(有馬稲子)に思慕の情を寄せるが、素子の本心が掴めず悩んだ。まもなく妻と別居中の立花がとつぜん謎の自殺をとげ、素子は立花が投資している土建会社の社長田沢(加東大介)の秘書になった。二年間も幾島を慕いながら、打ち明けずにいる大里町子(桂木洋子)は友人の尽力で幾島に会うが、彼が素子を恋していると知って悲しくも諦めようとした。一方、素子から曽根部落の黒岩万五(渡辺文雄)のような野性的な男が好きだといわれた幾島は、一切を清算して紀州の自然科学博物館に就職した。ある日、幾島は見学団の中に町子の姿を見出したが、町子は憤りをこめた眼で逃げ去るのだった。そのころ、素子は田沢の指図で立花別荘をホテルに改造するため、浅間山麓にあったが、水源地問題は、土建会社と小峰喬(内田良平)を先頭とする村の人々の対立に不穏な空気をはらんでいた。その渦中へ、紀州から町子を追って上京した幾島が、立花夫人の自殺を告げに現われた。素子は初めて、互に憎みきれなかった立花夫妻の愛情を知った。幾島が探し当てた新しい水源地が、黒岩の仕掛けたダイナマイトでひらかれた。歓声と共に水がしぶきを上げて噴き出た瞬間、黒岩は傷つき彼を慕う小峰の妹セツ子(中川弘子)が駆け寄った。数日後、幾島は素子が採ってくれた“こもちしだ”を記念に山を降りて行くのだった。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
有馬稲子
佐田啓二
佐分利信
中川弘子
桂木洋子
小林トシ子
- スタッフ -
原作:岸田國士
監督:小林正樹
脚色:松山善三
撮影:森田俊保
音楽:木下忠司

配給:松竹
©1956松竹株式会社

ジャンル:現代劇