映画・アニメの世界

【作品データベース】夕やけ雲 ゆうやけぐも

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・78分
『野菊の如き君なりき』の田中晋二を再度主演に起用した(同作のヒロイン役・有田紀子も嫁いでいく病弱な娘役で登場)、淡くはかない下町青春人情譚。夢も希望もあるごく普通の少年が、やがては厳しい現実に直面し、それを受け入れて諦念の域に達することで明日の希望を見出していく姿は、当時の戦後派若者の開放的気質(姉役の久我美子がそれを象徴)とは真逆のものであった。しかし、耐え忍ぶ清貧の青春にも“美”があるという揺るぎない確信は説得力を持ち、人生の夢をつかめなかった大多数の人々の普遍的な共感をも生んだ。脚本は木下監督の実妹・楠田芳子のオリジナル。彼女が最初につけたタイトルは『青春』であった。

STORY
秋本洋一(田中晋二)の家は、ある下町の隅で魚屋をやっており、父源吉(東野英治郎)、母お新(望月優子)、姉豊子(久我美子)、妹和枝(菊沖典子)等の弟妹と七人家族で細々と暮らしていた。洋一は魚屋が嫌いで船乗りに憧れ叔父から貰った双眼鏡を手に毎日二階から遠くを眺めていた。姉の豊子は貧乏が嫌いで、恋人の須藤(田村高廣)と結婚の約束をしていたが、彼の父が事業に失敗したと聞くと彼から離れた。次いで豊子は新たに、金持ちの五十男との話を家族の反対をよそに一人で進めていた。こうした時、源吉は心臓病で倒れた。洋一は父と母の言葉に、魚屋になる決心をした。こうした洋一を慰めてくれるのは、双眼鏡に写る少女の姿であった。ある日、洋一と友人の原田(大野良平)は双眼鏡の少女の家を探し当てたが、その少女は、痛々しい病身の身で嫁いで行くところだった。洋一の姉豊子は、勤務先の課長に親代わりになってもらい、五十男の後妻になったが、別れた筈の須藤と箱根で遊んだりする無軌道ぶりを示していた。こうした彼女を探す夫の電話に、病をおして出た父源吉は、くずれるように倒れた。源吉の死後、妹の和枝は大阪の叔父幸造(日守新一)に引き取られていった。原田の母喜代(山田五十鈴)からは、親友の一家が北海道に転任することを知らされ、若い洋一の上には、次から次へと厳しい現実の波が打ち寄せてきた。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
久我美子
田村高廣
田中晋二
東野英治郎
望月優子
- スタッフ -
監督:木下惠介
脚本:楠田芳子
撮影:楠田浩之
音楽:木下忠司

配給:松竹
©1956松竹株式会社

ジャンル:現代劇