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【作品データベース】太陽とバラ たいようとばら

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・85分
太陽族や愚連隊など、非行が肯定されがちな戦後の風潮に憤った木下惠介監督が、持ち前の抒情性を排して制作した反骨の社会派青春映画。いわば金持ちのお遊びにしか見えない太陽族や愚かなヒロイズムに過ぎない愚連隊の台頭は、貧しい弱者を惑わせるものであり、排除されてしかるべきもの。しかし、映画がそのことを強く訴えるごとに、反逆と破滅の中の弱さを忍び出す主人公の青年から巧まずして若者特有のナイーブな美が炸裂し、一方で母と子の交流の中から抒情性が醸し出されてしまうあたりは、やはり木下映画。『日本の悲劇』が戦後の母の悲劇を描いたものなら、本作は戦後の息子の悲劇を描いたものとして、見事な対をなしている。

STORY
八月も終わりの湘南海岸。秋山清(中村賀津雄)は与太者仲間山中次郎(田村保)や辻長七(田中晋二)と、連日、盗み、タカリ、喧嘩と荒んだ青春の日を送る。清の父親が戦後間もなく、買い出しで事故死した後、母親(沢村貞子)は不良の清に手をやきながら内職で細々と生計を立て、夜間高校に通う清純な妹薫(有田紀子)や、幼ない篝(鈴木久弓)共々、厳しい現実と闘っていた。だが清は、遂には警察に捕まる始末。母親の強い意見から、清はやがて母が家政婦を勤める別荘の長谷夫妻(北竜二、三宅邦子)の尽力で、その工場に働くことになる。長谷の長男正比呂(石浜朗)は、ふとした折薫の美しさに惹かれ彼女を追い廻す一方、清を自分らの太陽グループに引き入れる。清は母の心配もよそに、工場を休み給料前借で遊び暮らす有様。すべてに理性を失ってきた清は、太陽娘の洋子(杉田弘子)と過ごして戻った時、母から亡父の仏前で反省をうながされても捨ゼリフを残して飛び出す。偶々、正比呂の指図で喧嘩した清は彼の家に伴われ、家庭に戻ると豹変する彼に呆れるが、自分と違い何不自由ない生活ぶりに、次第に反発を感じ出す。翌朝正比呂の両親が清に会いたいと言って来る。清の母の手紙を前に優しく話す夫妻。正比呂のため身を誤った姉敬子(久我美子)も清には親切であった。清が去った後、敬子は今迄の事をすべて母親に語り、二人で正比呂の後を追う。一方、別荘へ向う清は、途中会った母の言葉に耳も貸さず、そのままダイスに耽る正比呂らの許へ。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
中村賀津雄
沢村貞子
有田紀子
石浜朗
久我美子
三宅邦子
田中晋二
- スタッフ -
監督:木下惠介
脚本:木下惠介
撮影:楠田浩之
音楽:木下忠司

配給:松竹
©1956松竹株式会社

ジャンル:現代劇