INTRODUCTION
上映時間・80分　歌舞伎座作品
先頃世間を賑わした、娘の父親殺しを素材としたもので、水上伸郎・峰竜太の共同脚本を、野村企鋒が監督、荒牧正が撮影した。出演者は望月優子をはじめ、福原秀雄・青柳寿恵・島田典子・左卜全・中村是好など。

STORY
東京のほとりのバタヤ村落。平井親子はバタヤの親方吉田（左ト全）を頼ってきた。彼の温情でやっと職にありつき、平井（福原秀雄）は真面目にバタヤ暮らしを始めた。しかし彼は酒には目のない男だった。吉田を頼ってきたのも、元はと言えば、酒のために身を持ちくずしたからだった。小銭が入り始めると、いつか彼はまた酒びたりの生活に戻って行く。彼の妻・あき（望月優子）は嘆じたのである、酒さえ飲まねば良い夫なのに。長女の君子（青柳寿恵）はもう十六歳になっていた。彼女には母の嘆きがよく判った。妹の芳江（島田典子）や幼い弟・常夫（春日井宏住）までが父をおそれた、働きに出ずに寝ころがって酒に溺れる父を。事実、平井は酒が入ると狂暴になる。あきが暗いうちから家を出て働いてきた金が、たちまち彼の手で酒に代わった。米を買う金もなくなる。母子を飢えが攻めたてた。近所の惣菜屋が見かねて君子を雇ってくれた。やっと急場はしのげたが、平井の行状は改まらない。吉田も怒り出し、追い出すと言った。母子は泣いてすがった。平井は、それでも、友人が強盗を誘ったとき、きっぱり断るくらいの良心は持っていた。君子がいくばくの食物を持って帰宅し、弟妹に与えていると、平井は悪態をついた。彼は狂暴になり、わが子に乱暴を働き、あきがとめると、彼女を半殺しの目にあわせたのだ。あきはそのまま家出した。彼女が子供のために残した、その日のわずかばかりの働貨は、平井がたちまち酒にかえた。酔って寝ころがった父を子どもらは憎悪の目でみつめた。

- キャスト -
福原秀雄
望月優子
青柳寿恵
島田典子
- スタッフ -
監督：野村企鋒
脚本：水上伸郎
脚本：峰竜太
撮影：荒牧正
音楽：長沢勝俊

配給：松竹
Ⓒ1958松竹株式会社

ジャンル：現代劇