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【作品データベース】わが愛わがあい

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・97分
井上靖の「通夜の客」を、『硫黄島(1959)』の八住利雄が脚色し、『からたち日記』の五所平之助が監督した抒情編。『伴淳の三等校長』の竹野治夫が撮影した。戦中、戦後を通じて妻ある佐分利信を激しく愛し抜く女心を描いたもので、有馬稲子の好演が注目された。

STORY
敗戦後四年の秋の夜、新津礼作(佐分利信)の通夜の席に、見知らぬ女客が現れ、死顔を素早くのぞきこみ、そそくさと去った。水島きよ(有馬稲子)とだけいった。--新津は戦争中、新聞記者として活躍したが、敗戦になると、一人だけで山へこもった。久しぶりの上京の時、突然、死んだのである。妻・由岐子(丹阿弥谷津子)と二人の子が残された。--水島きよは淋しかった。死顔をのそきこんだ時、あの人の眉がピクリと動いた。何を言いたかったのだろう。きよが新津と初めて会ったのは、十七の時だった。彼はきよが身を寄せていた柳橋の叔母の待合に度々遊びにきた。芸者の秀弥(乙羽信子)といい仲だった。川開きの夜、きよは彼ら二人と飲み同室で寝た。新津がその時いった言葉《大きくなったら浮気しようね》が、きよには忘れられなかった。戦争は激しくなり、きよは成長した。縁談もあったが、断り続けた。南方の特派員から内地へ戻った新津が、ある晩、友達と訪ねてきた。上海へ発つことになったのだ。空襲の下で、きよは新津に身を投げかけていった。--一年後には、戦争は終っていた。きよは焼け残った柳橋に、従妹と住んでいた。新津は社に辞表を出し、中国地方の村で百姓をやることにして、お別れに顔を見せた。彼は空襲の夜のことは忘れているようだった、何もかも。彼の後姿が淋しげに見えた。--彼が一人で村へ行ったことを知ると、きよは矢も楯もたまらず、後を追った、すべてを捨てて。新津は便利した。やもめ暮しみたいな生活に、女の手は有難かった。きよは彼が山にいる間だけ愛してもらうつもりだ。彼は“中国塩業史”の原稿をまとめるまで山にいる。村の人々は、最初きよを妾として扱い、口もきかなかったが、彼女の男への尽しぶりに同情し、打ちとけた。新津が京都へ行った帰途、東京の自宅へ寄ったことが、きよを悲しませ、死のうと思わせた。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
有馬稲子
佐分利信
丹阿弥谷津子
乙羽信子
- スタッフ -
原作:井上靖
監督:五所平之助
脚色:八住利雄
撮影:竹野治夫
音楽:芥川也寸志

配給:松竹
Ⓒ1960松竹株式会社

ジャンル:現代劇