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【作品データベース】人間の條件 完結篇 第五部死の脱出、第六部曠野の彷徨 にんげんのじょうけん かんけつへん だいごぶしのだっしゅつ、だいろくぶこうやのほうこう

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・190分
大河シリーズ堂々の完結。戦争を忌み嫌いながらも戦争に巻き込まれていく被害者であり、一方では敵を殺す加害者として生きていかざるをえなかった梶の二重の苦悩は、実は当時の多くの日本人が抱えていた苦悩であったことを、小林は自らの過去の体験に即しながらリアルに描出。また、それでも戦争という非人間的な行為を、人間として乗り越えようとする梶の姿は、せめて彼のようにありたかったという当時の日本人の想いを代弁しているかのようでもある。社会に対する理想と現実のギャップから醸し出されるペシミスティックな想いを、純粋な愛の尊さをもって払拭しようと図り続けた松竹時代の小林作品の総決算ともいえよう。

STORY
ソ連国境でソ連軍の攻撃を受けた梶(仲代達矢)の隊は、梶と弘中伍長(諸角啓二郎)と寺田二等兵(川津祐介)を残して全滅した。三人はただ歩いた。やがて、川に出た。そこには避難民の老師教夫婦や、慰安婦の竜子(岸田今日子)と梅子(瞳麗子)、部隊から落伍した匹田一等兵(清村耕次)たちがいた。彼らは梶の指揮に従って歩きはじめた。飢えから倒れていく者が多くなった。丘の麓に、永田大尉(須賀不二男)の率いる一個中隊が休息していた。女連れの梶たちをののしり、食糧すら与えなかった。しかし、かつて野戦病院で一緒だった丹下(内藤武敏)が隊にいて、乾麺包にありつくことができた。林のはずれに一軒の農家を見つけ、彼らは豚を煮て大休止をした。が、それも束の間、民兵が家を囲み、竜子は悲惨な殺され方をした。生き残った六人はやっと道路に出た。日本人の避難民が行き、赤軍のトラックが通る。倉庫のような建物に三十人ほどの避難民の女がいた。叔父の家から北湖頭の自分の家へ帰る姉弟と一緒になった。一緒に南満へ行こうと勧めたが、どうしても家へ帰るといい、匹田と桐原(金子信雄)が送っていった。「あの娘は適当に扱ってやったよ」という桐原を、梶は怒って追い出した。平坦な地平線に開拓集落をみつけた。老人や女ばかりの避難民。日本兵はここにきては食糧を荒していき、女たちには黒パンをもってくるソ連兵の方がよかった。突如、ソ連兵が向ってきた。女の「やめて、ここで戦争をしないで」という叫び声に、梶は呆然として降伏した。梶はソ連陣地に連れられていった。収容所には桐原がいて、捕虜を管理していた。寺田が大豆を盗んだことが発覚して、桐原は寺田をなぐった。寺田は高熱に苦しんだ。梶は寺田のかわりに作業をサボって食糧をあさった。桐原はソ連将校に告口をし梶はサボタージュの罰として重労働を言いわたされた。森林軌道の撤去作業についた。収容所へ帰った梶は、寺田が桐原になぐり殺されたことを知った。その夜、梶は寺田の殺された便所の裏で桐原をなぐり殺した。梶は鉄条網を抜け出した。やがて、雪が降りだした。「美千子、僕は君のところへ帰るよ」とつぶやきながら梶は倒れた。その上に雪が降りしきった。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
仲代達矢
新珠三千代
高峰秀子
中村玉緒
川津祐介
- スタッフ -
原作:五味川純平
監督:小林正樹
脚色:松山善三
脚色:小林正樹
脚色:稲垣公一
撮影:宮島義勇
音楽:木下忠司

配給:松竹
©1961松竹株式会社

ジャンル:現代劇