映画・アニメの世界

【作品データベース】拝啓天皇陛下様 はいけいてんのうへいかさま

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・98分
週刊現代連載・棟田博原作を、野村芳太郎監督が渥美清の主演で贈る、軍隊喜劇。幼い頃に両親と死別した山田正助にとって、3度の食事ばかりか俸給まで貰える軍隊はまさに天国。戦争集結の噂を聞いた正助は、軍隊から放り出されまいと天皇へ手紙を書く。渥美清が、天皇陛下に手紙を書く一歩兵に扮した、おかしくも哀しい戦争ヒューマンコメディ。軍隊生活の矛盾を逆説的に浮かび上がらせるという切り口を通じ、哀歓あふれる傑作となった。

STORY
山田正助(渥美清)はもの心もつかぬうち親に死別し世の冷たい風に晒されてきたから、三度三度のオマンマにありつける上、何がしかの俸給までもらえる軍隊は、全く天国に思えた。意地悪な二年兵が、彼が図体がでかく鈍重だからというだけで他の連中よりもビンタの数を多くしようと大したことではなかった。ただ人の好意と情にはからきし弱かった。入営した日に最初に口をきいてくれたからというだけで棟本(長門裕之)に甘えきったり、意地悪二年兵に仇討してやれと皆にケツを叩かれても、いざ優しい言葉をかけられるとフニャフニャになってしまう始末だった。だが、中隊長(加藤嘉)の寄せる好意には山正も少々閉口した。営倉に入れられれば一緒につきあうし、出て来れば柿内二等兵(藤山寛美)を先生にして強引に読み書きを習わせる。昭和七年大演習の折、山正は天皇の“実物”を見た。期待は全く裏切られたが、この日から山正は天皇が大好きになった。戦争が終るという噂が巷に流れ出すと、山正は天国から送り出されまいとあわてて「拝啓天皇陛下様」と、たどたどしい手紙をかこうとした。が、それは丁度通り合わせた棟本に発見され、危く不敬罪を免れた。まもなく戦況は激化、満州事変から太平洋戦争へと戦線は拡がり、山正はその度に応召し、勇躍して戦地にむかった。そして終戦、山正にはただ住みにくい娑婆が待っているだけだった。懐しい棟本を訪れ、ヤミ屋をしたり開拓団に入ったりの生活をしていたが、同じ家に住む未亡人に失恋した日から山正は姿を消した。そして再び姿を見せた時、山正は女房になってくれるという女性を連れて来て棟本を喜ばせた。雪の降る朝、「酔漢トラックにはねられ即死」新聞は山正の死を伝えた。棟本はいい知れぬ悲しみに泣いた。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
渥美清
長門裕之
中村メイコ
左幸子
高千穂ひづる
藤山寛美
- スタッフ -
原作:棟田博
監督:野村芳太郎
脚色:野村芳太郎
脚色:多賀祥介
撮影:川又昂
音楽:芥川也寸志

配給:松竹
©1963松竹株式会社

ジャンル:現代劇