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【作品データベース】残菊物語 ざんぎくものがたり

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・105分
名優尾上菊之助の悲恋を描いた村松梢風原作の再映画化。溝口健二監督(1939・松竹)、島耕二監督(1956・大映)に次いで大庭秀雄が監督した。甘やかされた歌舞伎の御曹子が、子守り女から芸の未熟を指摘されて目を覚ますという芸道もの。歌舞伎界の当時のホープ、三代目市川猿之助が主人公を演じている。

STORY
尾上菊之助(三代目市川猿之助)は、養子ながら五代目菊五郎(嵐寛寿郎)の後継者として、苦労なく育ったが、上すべりな人気に思い上っていた。しかし、弟幸三の若い乳母お徳(岡田茉莉子)に真実のこもった忠告の言葉を聞かされ、自分の不覚を悟り、お徳へ言い知れぬ想いを抱くようになった。かくて養父と衝突した菊之助は、単身大阪の尾上多見蔵(明石潮)の許へ走った。一年後東京での人気に代る予想以上の不評に、菊之助は我が身の実力を目のあたりに見る思いだった。そんな菊之助を気遣ったお徳は、菊之助を訪ね、二人はあんま元俊の二階を借り、晴れて夫婦となった。折りも折、頼る多見蔵の急死に逢い、遂に菊之助は大坂にも居ることが出来ず、旅廻りに身を落した。長旅にお徳は胸を病み、菊之助は荒んでいった。そんな時、名古屋で菊之助の親友福助(津川雅彦)の一行に会ったお徳は、福助に菊之助の復帰を頼み込んだ。本舞台での菊之助の懸命の演技は認められ、やっと菊之助の東京復帰の夢がかなえられる日がきた。しかし、お徳は出発の汽車に姿を現わさなかった。お徳が身をひくという犠牲があってこそ、菊之助の復帰は許されたのだった。五代目菊五郎の大阪初下りの日、お徳はひとり菊之助との思い出の二階に伏せっていた。知らせを聞いた菊之助に菊五郎は初めて言った。「菊今日の主役は六代目になるお前ヱだぜ。女房に逢って来てやれ」病気やつれしたお徳に、養父の許しを知らせ、菊之助は晴れの船乗り込みに臨んだ。うらぶれた二階の床に、船乗り込みのおはやしが何時までも聞えていた。その船の上で笑顔で挨拶をくりかえす菊之助の眼に、お徳の愛を想う涙がひかっていた。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
三代目市川猿之助
岡田茉莉子
嵐寛寿郎
津川雅彦
北上弥太郎
伴淳三郎
- スタッフ -
原作:村松梢風
監督:大庭秀雄
脚本:依田義賢
撮影:厚田雄春
音楽:黛敏郎

配給:松竹
©1963松竹株式会社

ジャンル:現代劇