映画・アニメの世界

【作品データベース】とどけ母の叫びとどけははのさけび

作品情報

INTRODUCTION
上映時間・77分 京都作品
ルバング島に今なお生き残ると伝えられる元日本兵救出問題にヒントを得て書かれた依田義賢のオリジナルもの。福田晴一が監督し、太田喜晴が撮影した。

STORY
昭和28年夏--元陸軍少尉平井健一(田村高廣)、元陸軍一等兵谷本信夫(中原伸)の七回忌法要が、ひっそりと行われていた。そこへ、一人の青年、青木順吉(浜田寅彦)が訪れ、健一と信夫が、生存していることを伝えた。--青木の語る模様はこうであった。終戦の日、ジャワの中部地区の小さな集落に駐屯していた平井少尉は、降伏をいさぎよしとせず、部下27名とともに、山にこもることとなった。インドネシアが独立したことも、ジャワ在住の日本軍や居留民がすべて引揚げたことも、イギリス軍にかわってオランダ軍が進駐したことも、激しいインドネシア独立戦争がつづけられたことも、すべてを知らずに、日夜、原住民とイギリス軍だとばかり思っていたオランダ軍の襲撃におびえながら、ただ食うための闘いがつづけられた。6年間。しかも、それは死にもまさる苦しみだった。健一の母、うめ(山田五十鈴)は出征の日のことを思っていた。「必ず生きて帰って来るよ」という息子に、「生き恥だけはさらすな」とはげしく言った自分の姿を。うめの心にはほんぜんとして母性愛が目ざめて来た。朝もやをついて、信夫の母たね(浦辺粂子)と妹の幸子(川口京子)をたずねたうめの顔には、かつての、地主の権威と、軍国の母にこわばった冷たさはなかった。はっきりと、自己の非をさとったうめは、生き残っている九人の人々を救うため、息子を説得するためにジャワに向った。インドネシア政府の厚意によって、青木とともに山に向ったうめの顔には、死をとしても九人を救い出そうという決意かみなぎっていた。しかし、涙とともに訴えるうめの声にも何の反応もなかった。--死んでしまったのだろうか。これ以上の前進は危険だと言う警察隊の制止にもかかわらずうめは進んだ。マイクを片手に。その時、山の上に一人の男が立った。二人、そして三人。……一瞬の沈黙の後わきあがった喜びのどよめきの中で、銃は高々とほうりあげられた。ついに、母のさけびはとどいたのだ。

キャスト・スタッフ

- キャスト -
山田五十鈴
田村高廣
川口京子
- スタッフ -
監督:福田晴一
脚本:依田義賢
撮影:太田喜晴
音楽:池田正義

配給:松竹
Ⓒ1959松竹株式会社

ジャンル:現代劇